盲腸
2000年9月14日「盲腸」と言ったら誰でも分かると思うが、もちろんあの右下腹部痛や発熱・嘔吐などを伴う炎症性の疾患である。
本当の病名は「(急性)虫垂炎」である。
正確に盲腸を説明するとすれば、「回腸(小腸)末端であるBauhin(バウヒン)弁から虫垂に至る結腸(大腸)の一部分」ということになる。
だから、「盲腸を切った」とよく言うが、本当に盲腸を切ろうと思ったら、Bauhin弁の機能上、盲腸だけではなく、回腸末端と上行結腸の一部まで切る回盲部切除を行わなければならない。第一、あんな2〜3cmの傷からは盲腸は取り出せないのである。
もちろん、医者サイドでも、虫垂炎と言うより盲腸と言った方がわかりやすので、そう言うことがあるのだが、本当は違うということをお見知りおきを・・・
と言うわけで本題・・・
右下腹部痛と言う主訴を聞いて、外科医がまず疑うのが、もちろん急性虫垂炎である。(医者の間ではアッペと言う。acute appendicitisを略してアッペ。)
その時の触診所見・採血結果・超音波などから、最終的に確定診断を出すのだが、アッペと診断がついたときから、外科医の葛藤が始まる。
第一の葛藤・・手術をするか、抗生剤点滴で保存的にみるか。
第二の葛藤・・皮膚切開はMcBurney(マックバーニー)斜切開にするか、傍腹直筋切開(パラレク・pararectal incision)にするか。
第三の葛藤・・仮にMcBurney斜切開にして、虫垂摘出が可能かどうか。
などなど・・・
抗生剤の選択が幅広くできる現在、第一の葛藤については最終的には患者との話し合いによって決まることが多い。(もちろん腹膜炎などを併発している場合には緊急手術を行うことが多い)
それで指標となるのが患者の痛みである。
「死にそうに痛いからもう切って下さい」とか「できるだけ手術はしたくないです」という患者の訴えで、ある程度判断することになる。
さて、手術をすることとなったときに襲ってくるのが第二・第三の葛藤。
McBurney斜切開というのは、右下腹部を2〜3cm斜めに切る一般的な方法(美容上優れており、比較的周囲に炎症が広がっていない場合に用いる)。パラレクとは、縦に5〜6cm切る方法(炎症が周囲に広がったり、虫垂が盲腸の後ろに癒着している場合などに用いる)である。
外科医の立場から言うと、パラレクの方がストレスがなくていいのだが、心情的には(特に若い女性であった場合には)McBurneyにしてやりたい。しかし、この判断基準は飽くまで総合的に判断しなくてはならない。
私が先輩に教えてもらった方法は、麻酔がかかった段階で触診してみて、腫瘤を触れるようならパラレクでいきなさいということであった。これで今まで何とかうまくいっている。
あなたがアッペになった場合、その診断を下した外科医は「盲腸だから切りましょうか?」と言いながら、上のような嵐のような葛藤に悩まされていることをお忘れなく・・・
本当の病名は「(急性)虫垂炎」である。
正確に盲腸を説明するとすれば、「回腸(小腸)末端であるBauhin(バウヒン)弁から虫垂に至る結腸(大腸)の一部分」ということになる。
だから、「盲腸を切った」とよく言うが、本当に盲腸を切ろうと思ったら、Bauhin弁の機能上、盲腸だけではなく、回腸末端と上行結腸の一部まで切る回盲部切除を行わなければならない。第一、あんな2〜3cmの傷からは盲腸は取り出せないのである。
もちろん、医者サイドでも、虫垂炎と言うより盲腸と言った方がわかりやすので、そう言うことがあるのだが、本当は違うということをお見知りおきを・・・
と言うわけで本題・・・
右下腹部痛と言う主訴を聞いて、外科医がまず疑うのが、もちろん急性虫垂炎である。(医者の間ではアッペと言う。acute appendicitisを略してアッペ。)
その時の触診所見・採血結果・超音波などから、最終的に確定診断を出すのだが、アッペと診断がついたときから、外科医の葛藤が始まる。
第一の葛藤・・手術をするか、抗生剤点滴で保存的にみるか。
第二の葛藤・・皮膚切開はMcBurney(マックバーニー)斜切開にするか、傍腹直筋切開(パラレク・pararectal incision)にするか。
第三の葛藤・・仮にMcBurney斜切開にして、虫垂摘出が可能かどうか。
などなど・・・
抗生剤の選択が幅広くできる現在、第一の葛藤については最終的には患者との話し合いによって決まることが多い。(もちろん腹膜炎などを併発している場合には緊急手術を行うことが多い)
それで指標となるのが患者の痛みである。
「死にそうに痛いからもう切って下さい」とか「できるだけ手術はしたくないです」という患者の訴えで、ある程度判断することになる。
さて、手術をすることとなったときに襲ってくるのが第二・第三の葛藤。
McBurney斜切開というのは、右下腹部を2〜3cm斜めに切る一般的な方法(美容上優れており、比較的周囲に炎症が広がっていない場合に用いる)。パラレクとは、縦に5〜6cm切る方法(炎症が周囲に広がったり、虫垂が盲腸の後ろに癒着している場合などに用いる)である。
外科医の立場から言うと、パラレクの方がストレスがなくていいのだが、心情的には(特に若い女性であった場合には)McBurneyにしてやりたい。しかし、この判断基準は飽くまで総合的に判断しなくてはならない。
私が先輩に教えてもらった方法は、麻酔がかかった段階で触診してみて、腫瘤を触れるようならパラレクでいきなさいということであった。これで今まで何とかうまくいっている。
あなたがアッペになった場合、その診断を下した外科医は「盲腸だから切りましょうか?」と言いながら、上のような嵐のような葛藤に悩まされていることをお忘れなく・・・
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