「この患者さん、頚部のリンパ節が腫れてて、不明熱がずっと続いているんですよ。抗生剤点滴しても一向によくならないから、いっぺんリンパ節生検してもらえませんか?」
内科のドクターから患者の紹介である。

一般的に、「リンパ節が腫大する」という現象は、何らかの細菌やウイルスの感染のため、生体防御の一環としておこる現象であるが、稀にリンパ節の腫瘍性病変(悪性リンパ腫など)の存在も考えておかなくてはならない。
確定診断を下すためには、腫大しているリンパ節を摘出し病理組織で判断するのだが、そこで我々外科医の登場となるのである。

内科からみたら、その病理組織の結果によって治療方針が変わってくるので大変重要な検査なのだが、外科サイドから言わせれば、リンパ節生検というのは小手術の部類にはいる。
よって、研修医の格好のトレーニングの場所なのである。

患者をベットに寝かせ、消毒をして、清潔野を保持するために穴あきのグリーンシーツをかぶせる。(ここまでは、中堅どころのいかにも切れそうな外科医が処置する。ここで大事なのは、シーツで患者の視界を完全に遮断するのである。)
その時点で、その中堅どころの医者が、そばにいる研修医に目配せして、
・・・おい、お前がやれ・・・
と目で訴えるのである。
そのあとは、研修医が独壇場となって、局所麻酔、手術を行うのである。
そして、手術が終わると、再度中堅どころの医者がシーツをめくり、優しそうに
「ハイ、終わりましたよ」という仕組みである。
もちろん、この時、研修医は姿を隠している。

こうやって、少しずつ外科医は成長していくのだ。
怖ろしい話ではあるが、事実である。

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