教授回診

2000年12月15日
最近、一週間に一話というペースが続いているわけだが、たまに覗きに来ると、リンクしてくれている方が増えており、こういうこっちゃいかんなと思いながら、ネタを求めて仕事に精を出している次第である。

今日の話は、最近のことではなく、私が研修医であり、まだ大学にいた頃のお話である。
以前にも書いたことがあるように、大学というところは、形式を重んじるために、やることなすこと全てが芝居がかっている。
週に一度ある教授回診というのはその最たるものである。
患者一人一人について、その主治医がベッドサイドで教授に向かい、患者の状態、検査の進み具合について説明するわけであるが、我々主治医は、悪性疾患の患者が多いこともあって、医学的な専門用語を使いながら教授に説明することが多い。


「68歳、HCCのope後7日目の方です。術後からjaundiceの方が遷延しておりまして、nauseaが強くapetiteもpoorな状態です。現在nuturitionはIVH管理となっておりますが、apetiteが改善次第、enteral nuturitionに変更していきたいと考えております。infectionの兆候はありません。」などと、教授に説明するわけである。
この文章の意味は、「68歳で肝癌の手術後7日目であり、術後から黄疸が遷延し、吐き気が強く食欲もないため、現在は中心静脈栄養で管理しているが、食欲が改善次第、経口摂取に切り替えていきたい。感染の兆候はない。」という意味なのであるが、上記のように訳の分からない文章で説明するのである。

しかし、教授もやはり人間であり、たまにその説明で頭がこんがらがるのであろう。患者に向かい、「ほぅ、nauseaがありますか?」などと聞いて、患者は訳が分からずきょとんとしている風景をたまに見かけるのである。

芝居がかった中にも、ホッとするようなおかしさがある教授回診であった。

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